こんにちは。全国で講演、セミナー研修など行っている
農業講演家の山下弘幸(やましたひろゆき)です。
農業歴35年。親元就農後、個人、法人の農業経営を経て
農業コンサルタントに転身し、
現在、新規農業者、若手農業者、企業農業参入支援などをしています。
具体的には、稼げる農業を実現する
”1歩先行く農業者”のオンラインコミュニティ
「農業ビジネススクール(農ビジ会)」を主催し
全国200名の農業者と毎月勉強会や情報交流を行っています。
また、定期的に更新しているyoutube(農テラスチャンネル)では
全国の農業者へ「農業経営・農業ビジネス」の最新情報をお届けしています。
さて、今回の山下弘幸農ビジコラムテーマは
「私のミッション」についてです。
今年もいくつかの農業経営塾が始まります。
おかげ様で今年度も各地で講師を務めさせていただくことになっています
このような農業勉強会や経営講座、経営塾などは県や市町村が開催するもので、
目的は「農業の次世代人材」を作ること。
しいては、理念型農業者を輩出すること。
理念型農業者とは理念に基づいた農業者のことです。
具体的には
価値観やビジョンを表し、そのビジョンを達成するための行動として農業をやっている人のことを言います。
つまり、「経営」感覚を身に着ける人材であり、
“私のミッション“はこれらの人材を輩出することです。
このような講座や塾が各地で開催される背景には
農業の担い手不足の解消が主ですが、国としては「国民の食」を守る人材の創出が目的だと認識しています。
さらに深堀すると、食を生み出す農地を維持しつつづける人材の創出がベースに
あると考えられます。
そして、これらを推進するためにして全国各地で
「持続継続できる農業」プロジェクトとして農業塾や講座が実施されているのです。
つまり、大きく言えば、
次世代農業者の育成は国が存続するための人材育成プロジェクトであるとも言えるのです。
そしてその人材を育成する任務をいただいていることを使命だと感じております。
さて、この大きなミッションの中で私が取り組んでいることは
「理念の探求」です。
なぜ、農業やっているのか?なぜ、それを生産しているのか?を掘り下げること。
つまり、受講者の「脳内整理」をやることです。
よく、講座の中で、
なぜ?農業に取り組んでいるのか?と質問すると、
多くの受講生はまず、自分が何をやりたいのか?どこへ行きたいのかが
整理できていないことのほうが多いように感じています。
例えば、なぜ?農業をやっているのか?と聞けば
「親、祖父が農家だったから」とか
「補助金もらえるから」とか
「元の職場が楽しくなかったから」など「きっかけ」は安易なことが多く見受けられます。
ただ、農業を何年かやっていくうちに
やがてどういう農業をやりたいかという「ビジョン」が見えてくるものです。
そこで、
何年か農業をやってきた受講生に
「これからどういう農業をやりたいですか?」と問いかけると
次のような答えが返ってきます。
“売上上げたい、設備投資したい、販路拡張したい”
“家族経営から雇用型へ変えたい、法人化したい”などなど。
これらはすべてテクニックで解決できるものばかり、そう難しいことではありません。
なぜなら、
すでに、やっている先輩から学べばよいだけのことですから。
ただ、問題は先輩に学ぶ、教えてもらう、聞く、尋ねる。
この「勇気」がないことが問題だと感じています。
勇気とは「突き動かされるチカラ」のこと。
どうしてもやりたい、やらないと気が済まない湧き出てくるエネルギーのことです。
私たち講師は「経営」を教える時、
このエネルギーのことを「理念」という言葉で説明します。
ただ、この「理念」というのに自分自身で気付くのが難しいのです。
なぜなら、日ごろ顕在意識で生きている私たちは心の奥底に眠る
「潜在意識」に気付かないからです。
例えば受講生に将来どうなりたいのですか?との問いに対して
「売り上げを1億円にしたい」と答える受講生がいたとします。
そこで、なぜ?売上1億円を目指すのですか?と聞くと
言葉に詰まります。
なんとなく、かっこいいから、となりの農業法人がそのくらい売り上げているから、
講師の先生に1億目指せって言われたから・・・
などなどいろんな答えが出てくるかもしれません。
ただ、本質的な答えは
1億の売り上げにより経営が安定する。が本質的な答えかもしれません。
中には、
隣の農家を追い越したいから。が本質的な答えかもしれません。
もしくは、
金持ちになりたいから。が本質的な答えかもしれません。
さらに、そのことを掘り下げます。
経営が安定すると答えた人は「従業員の雇用を守りたいから」が奥底の答えかもしれません。
隣農家に勝ちたいは「自己重要感」を満たすためかもしれません。
金持ちになりたいは「承認欲求」を満たすためが答えかもしれません。
さらに、深堀すれば
従業員雇用を守りたい。は過去に自分が会社でリストラされた経験からくるものかもしれません。
自己重要感を満たしたいのは過去に親から兄弟や周りの友達などと比較されて生きてきたのが理由かもしれません。
承認欲求を満たしたいのは過去に親から褒められたいのが根底にあるのかもしれません。
このように
私たちの「どうなりたい」願望は過去のトラウマやコンプレックス、エピソードや事件などに紐づいていることが多いようです。
理念を考える時、このように「自分の棚卸」をすることで
自分自身を分析することができます。
そこでたどり着いた「本当の意識」をもとに
何をすべきか?なぜそれをやるのか?を導きだした経営者は
めちゃくちゃ強くなります。
つまり、ぶれなくなるのです。
つまり、あきらめなくなるのです。
つまり、理念型農業者になれるのです。
私も親が農家だったからという単純な理由だけで農業の道を選びました。
ただ、農業を続けていくうちに
ビジョンを見つけ、理念を抱き、やりたい農業、なりたい自分を探求し始めたのです。
逆に言えば、農家を理念型農業者まで引き上げなければ
農業後継者や担い手農業者はますます減り続けるでしょう。
もしくは「なんのため」がわからないまま「我慢」する農業者が
増え続けるでしょう。
農業の次世代人材育成は「惰性」や「我慢」を教えるのではなく、
「理念」と「経営」を教えなければなりません。
ですから、私のミッションは「理念型農業者」を輩出することなのです。